どうでもいいけど、僕は器が小さい。
ちょっとしたことでも、思い通りにいかなかったり自分が傷つけられたりすると、頭のどこかの血管がぷちっとした感覚になる。
表に出ないよう我慢するけどね。
短気な人なら分かると思うが、この我慢が実はとんでもなく苦行なんだ。なぜなら、短気はこれが一日に何回もあるから。
「表に出さまい表に出さまい……」
体の中のあちこちを動き回る怒りをなんとか捕まえようとするんだ。怒りが外に飛び出していかないように。
そういうときの時間って、実際の時間よりも長い。
こんなことを、気が短い人は一日に何回も体験している。
ま、我慢しない人は別だけども。
さまざまな対処法を試してみたが……
短気を肯定したように感じるかもしれないが、僕はこの器を何も野放しにしてきたわけでは無い。
アンガーマネジメントをはじめ、さまざまな怒りに対する勉強を自主的に行ってきた。
6秒間……
確かに衝動的に何か起こすことは少なくなった。
徐々に怒りの波が自分の中で引いていくのが分かった。
だが、もともと突発的な行動を起こすタイプではなかったため、根本的な怒りは解消されず。煙だけが不完全燃焼のようにもくもくと残り続けた。
怒りは第二感情だ。
何もないところにいきなり怒りが出ることはない。
怒りの原因となった「第一感情」、これが何なのか知ることが大切だとアンガーマネジメントでは言われている。
怒り、泣き喚いた、第一感情
僕は小学生のころ、トイレ掃除などのみんながやりたがらない役割を率先して行っていた。理由はきっと、褒められたかったのだろう。
しかし先生は見ているようでなかなか見ていない。
もともとひょうきんな性格で、褒められるよりも怒られることのほうが多かった僕は、なかなか「偉いね」という言葉が貰えなかった。
そして本来のトイレ掃除の当番である日、僕はそのことをすっかり忘れてしまって家に帰ってしまったんだ。
すると翌日、案の定僕は先生からお叱りを受けることになったのだが、そのときの言葉が信じられないものだった。
「そうやって好き勝手やってサボってばっかり」
我慢できずに怒った。
怒りすぎて泣いた、泣き喚いた。
きっとこのときの僕の第一感情は、
「先生に認めてもらえなかった」
このことがこんなに僕のことを怒らせてしまったんだと思う。
でも、こんなこと今も日常茶飯事だ、特に仕事なんかしていると。
さすがに泣き喚いたりはしないけど。
日常にはあらゆる怒りの種が転がっていることも、アンガーマネジメントの勉強で気が付くことができた。
しかし、ここにアプローチをかけても沸々とした感情を落ち着かせるのはやっぱり難しかった。
怒りに響いた、ある言葉
あるとき、僕は胸を打つ小説の言葉に出会った。
「人間は、みな人生の主人公なんだ」
この言葉が、僕にとって最高のアンガーマネジメントになった。
『意味分かんねー』
って思うでしょう?
自分でも意味分からないもん、なんでこの言葉が自分に響いてくれたのかが。今になってもよく分からん。
でもこの言葉が僕の小さな器には効果的だったんだ。
電車の中で学生とすれ違って肩が触れる。
『(・д・)チッ』
学生は僕のことを睨みつけて舌打ちをした。
このときに考えるんだ。
この人は主人公なんだ。自分以外の人は皆、ただの登場人物でしかならない。
この人はおそらく20年くらい前に生まれて、僕と同じように色々な人と関わりながら、自分を育てていったんだ。
いっぱい嫌なことも嬉しいことも経験してきて、痛いものは痛いし美味しいものは美味しい、眠たいときは眠たい。
自分とまったく同じで、人間だ。
こうすると急に人のことが想像しやすくなってしまって、第一感情で抱いた思いも主人公様に譲ってあげることができるようになった。
「人間は、みな人生の主人公なんだ」
この言葉に出会ってから、沸々とした感情を瞬間冷却することが今までよりずっと簡単になった。
それとほぼ同時に、
『人にされて嫌なことはしない』
小さいころに教えられた大人たちの言葉は、いまになってじんじんと響くようになった。
結局なにがいいたいの?
僕は1年以上、あらゆる怒りとの向き合い方を実践してきた。
モチロン効果はあったが、しっくりとは来なかった。
ではなぜ「人生の主人公」という一見アンガーマネジメントでは想像もできないような言葉で僕が落ち着けたのか、それは“たまたま”だった。
小説が好きだとか、ちょっと想像力があったとか、色んな理由を考えることはできるが、
きっと自分の中の“なにか”がヒットして、この方法が僕にはとても当てはまったのだろう。
一億何人かの人たちが一つの方法を実践して、全員しっくりくるワケがない。絶対自分にしかないツボって存在しているんだ。
だから、短気で悩んでいる人に言いたい。
上手くいかなくても失敗ばっかでも、絶対にあきらめないで欲しい。
いつか、僕みたいに自分のツボに出会えることがあるから。