1番好きなことを仕事にした彼は1番好きなことを失った

緑色の絵具



好きなことを仕事にすることは良いイメージがあるけれど、どうも良いことばかりではないようで。表題の彼みたいに好きなことを失ってしまう危険も潜んでいるよ。彼がどのように好きなことを仕事にしたのか、彼はどのように好きなことを失っていったのかを、なるべく簡潔に書いていくね。

最後まで見ていってね(*^▽^*)



絵を描くのが大好きな彼



彼には正社員のようなこれといった仕事が無かった。もともと団体の中で生活することが苦手な彼は、電子部品の組み立てやチラシ配りなどの内職的な仕事を日常的に行っていた。

ひとりで行動することを好み、他者が話しかけてもどこか素っ気ない返事をする彼だったが、そんな彼にも熱中しているものがあった。それは絵だった。

彼の絵は普通の人が描かないようなタッチで描かれていて、それはもう個性的。人間の手足を逆に描くくらい、奇想天外に筆を走らせていた。





ある頃から周りの人たちが声を上げ始めた。

「あの絵を形にしてあげよう」

きっと彼に長所が見つかったことが嬉しかったんだろう。彼のためを思って楽しいことを仕事にしてあげようとしたんだろう。彼は承諾をして、周りは彼のプロデュースを始めたんだ。

近所の公園だった絵を描く空間は、時には閉鎖された空間、時には人が大勢集まるイベント会場へと変化をしていった。そして好きな絵だけではなく、消費者様に指定された絵を描かなくてはならない日が続いた。





彼の作風はみるみるうちに変化をしていき、もともと感じられていた独特なタッチは見る影も無くなっていった。そして何より、彼の表情から笑顔がまったく見られなくなったんだ。この頃から彼は絵を描くことを拒絶するようになってくる。

僕は思ったんだ。息抜きくらいすればいいのにって。でも彼には息抜きをすることができなかった。

絵を描くことが彼の息抜きだったから。

よほど辛かったんだろう。彼はそれから一切筆を握らなくなってしまった。みんなが揃って期待した絵は、彼にとって大切な「1番好きなこと」だったのだと、後になって気が付いたのだ。


彼が失ったもの



彼は1番好きだった「絵を描くこと」で失敗をしてしまった。というよりは周りが失敗をさせてしまったのだが。1番好きなことで失敗したとき、立ち直れないくらいにつまずいてしまったとき、自分はいったいどこに逃げ込むんだろうと、彼を見て考えさせられたところがある。

これまで身を寄せていた「1番好きなこと」は既に崩れてしまっているのだから。



好きなことを仕事にするのって、意外と覚悟が必要なんだなぁ……

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